肩関節は、人の体の中で最も運動範囲(可動域)が広い関節で、腕と胴体をつなぐ重要な関節です。肩の痛みの原因には、外傷、使いすぎ、老化に伴うもの、頚椎障害などがあります。その中で頻度が多い「肩関節周囲炎」についてご説明します。
「肩関節周囲炎」は、肩関節の周辺にある肩峰下滑液包・上腕二頭筋長頭腱・関節包・腱板などが使いすぎや老化によって炎症を起こし、痛んだり動きが悪くなったりする病気で、いわゆる「五十肩」と呼ばれるものです。
40~60歳で発症することが多く、肩の老化が原因と考えられています。
ある日突然生じることもあれば、徐々に症状がでてくることもあります。運動痛(動かすと痛い)、夜間痛(痛みで眠れない)、拳上障害(自力で腕が上がらない)、インピンジメント徴候(腕を動かしたときに引っかかる感じ)などを生じてきます。
頭の後ろや、腰から肩甲骨まで、反対側の肩などに手が届かなくなる、両腕が広げられない場合などは五十肩が疑われます。両肩同時にはなりにくいですが、利き腕にかぎらず起こります。半年から1年くらい経つと症状は緩和していきます。
治療は、急性期(痛みの強い時期)には安静(無理な動作はしない)を保ち外用剤、内服治療、ステロイド剤・ヒアルロン酸注射などを行います。慢性期(運動制限が生じる時期)には、温熱療法・運動療法などで保存的に経過をみます。
高齢になるほど腱板は弱く、切れやすく、約20%に腱板断裂を伴うといわれています。X線検査ではほとんど異常所見がないため、疑わしい時にはMRI検査が有効です。
重いものを持ち上げるなどの肩に負担のかかる動作に注意し、肩を冷やさないようにしてふだんから適度な運動、手軽な運動、ストレッチを毎日続けることが大切です。
五十肩は誰にでも起こりうる病気なので「年だから仕方ない」「そのうち良くなる」となにもせずに放置されることが多いため、症状が長く続きやすく、再発することが少なくありません。大切な肩のために、根気よく治療することが大切です。
「五十肩かな?」と思っていたら、狭心症、心筋梗塞、肺疾患、胃潰瘍などの内科的疾患でも肩の痛みを訴えることもありますので、一度診察を受けられることをお勧めいたします。