医療法人弘仁会 板倉病院

船橋市の機能強化型在宅療養支援病院・救急告示病院
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子宮内膜症について

婦人科:安 学

子宮内膜症とは、子宮内膜が本来の子宮内腔以外の部位(卵巣、腹膜、子宮筋層内など)に存在する疾患です。特に卵巣に存在すると、月経のたびに出血がたまりチョコレート嚢腫という卵巣嚢腫を引き起こしたりします。子宮筋層内の内膜症は子宮腺筋症とも言われます。

はっきりとした原因は実はよくわかっていません。

月経血の逆流と関係しているのではないかという説もあります。月経血は、子宮内膜が子宮内腔からはがれて、本来、腟から排泄されるのですが、その一部が卵管を通ってお腹の中に逆流することがあり、お腹の中に落ちた子宮内膜の組織が、卵巣や腹膜などにくっつき、そのまま根付いてしまうという説です。

この他、腹膜がなんらかのきっかけで子宮内膜に変化して子宮内膜症が発症するという説もあります。

症状は、月経時の痛みですが、子宮内膜症がひどくなり癒着を起こすと、月経ではない時にも痛むことがあります。性交痛、排便痛なども引き起こします。さらに骨盤内に癒着が生じると、卵管が閉塞することによって不妊の原因にもなります。中にはごく稀ですが、肺に内膜症が存在すると、胸痛、血痰をきたすこともあります。

内視鏡や開腹にて直接病変部を診て確定診断がつきますが、身体の侵襲を考慮して、問診、内診、超音波検査、MRI検査、腫瘍マーカー(CA 125、CA 19-9)を用いて総合的に診断することが多いです。

治療は薬による痛みの管理、症状がひどい時は、Gn –RH療法、ダナゾールという薬を用いて一時的に閉経の状態に持っていくこと(偽閉経療法)が有効であるとされます。

Gn –RH療法、ダナゾールは閉経の状態になるので、副作用(ほてり、のぼせ、肩こり、頭痛、めまい、イライラするなどの更年期症状)が出る場合があり、しかも長期間使用すると骨密度が下がり骨粗鬆症になるリスクがあるため、6か月以上の使用は基本的にできません。低用量ピルを内服することや、ジエノゲスト(ディナゲスト)という内服薬を使用することも多いです。長期間使用でき、副作用も少ないことが利点です。

癒着がひどい場合や、チョコレート嚢腫が大きい症例は手術が選択されることもあります。チョコレート嚢腫は卵巣がんを合併することがありますので、長期間存在するときは注意が必要です。

(2017.1)