花粉症とは、スギ・ヒノキなどの植物の花粉によって引き起こされるアレルギー性疾患です。「季節性アレルギー性鼻炎」ともいいます。
ハウスダストやダニなどの、年間を通して原因物質が存在する「通年性アレルギー性鼻炎」とは異なるもので、年々患者数が増加しています。ある統計では、花粉症の総人口は2000万人以上ともいわれているほどです。
スギ以外にもヒノキ・シラカバ・ハンノキ・ケヤキ・コナラなどの樹木、またカモガヤ・ブタクサ・ヨモギなどの草花の花粉も、花粉症を起こすことが知られています。なかでも花粉症の原因はスギ花粉が1番多く、花粉症患者の7割を占めるといわれています。
スギ花粉が1番の原因になる理由は、全国の森林面積の18%、国土の12%を占めるという広大なスギ林が生み出す花粉量の多さによると考えられますが、近年のアレルギー性疾患の増加には衛生状態や環境の変化、大気汚染など、いろいろな要素が加わっていると考えられ、いまだに研究が進められているところです。また、ヒノキ花粉はスギと抗原相同性が高く、スギ花粉症の方はスギの飛散終了後もヒノキに反応してしばらく症状が続くことがあります。
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみが、花粉症の4大症状と呼ばれています。花粉アレルギーが起きる機序は、
なお、スギ花粉症と思っていても、春先の温度変化等に過敏に反応する非アレルギー性の鼻炎など、似ている疾患もあります。アレルギー性鼻炎全般に治療は共通ですが、もし正確な診断を希望されるのであれば、スギ花粉症に対するIgE抗体を血液検査(あるいは皮膚検査など)で証明する必要があります。
アレルギー性疾患全般にいえることですが、アレルギーの原因となる物質=アレルゲンを回避することが重要です。花粉症であればマスクやゴーグルなどを着用して外出する、などの対策となります。
薬物治療として、最近では海外での評価の流れを受けて、鼻症状に関してはステロイド点鼻薬を第一選択に推奨する方向となりつつありますが、くしゃみ・鼻水・目のかゆみには抗ヒスタミン薬(内服や点眼薬)、鼻づまり(鼻閉)に対してはロイコトリエン受容体拮抗薬が有効で、それぞれ単独あるいは必要性や重症度に応じて組み合わせて使用します。
薬物治療の進歩や花粉症対策の様々な商品の出現もあり、前述の治療法で大きな問題なく過ごせる方がほとんどかと思います。しかし、中にはこれらの治療を十分に行っても症状が強く、日常生活に影響してしまう方もいらっしゃいます。
特異的免疫療法(減感作療法)は、現在認められている唯一の根治療法です。従来は皮下注射法だけでしたが、最近「舌下法」が認められました。
当院でも「舌下免疫療法」を行えますが、花粉に対する免疫反応を変化させていくために、花粉の飛散時期以外も含めて、少なくとも2~3年以上治療を続けていく必要があります。重い症状に苦しんでおられる方で、治療に興味のある方は、どうぞ当科にご相談ください。